コース設計者の意図を見抜けば、必ず良いゲームができる!
今回のテーマは「コースがプレーヤーを育てる」です。良いコースを作った名設計とハザードの目的です。
設計家は何を思い、コースをどのように作るか?
もし、設計家の意図がわかれば、コース攻略も簡単になるでしょう。
早速、日本と世界の名設計家を見て行きましょう。
■チャールズ・H・アリソン
彼の作り出すコースの特徴は、ルーテイングと造形美があります。ルーテイングとはどのように18ホールズを配置するかという設計の基本となることで、これによりプレーが味わい深くもなり、単調にもなります。景観美を演出すると共に、技量レベルによって異なる複数の攻略ルートを作り出します。
イギリスのランカッシャー生まれ。オックスフォード大でゴルフトクリケットの名手として活躍。米国ゴルフ協会に市場最年少の21歳で招かれ、連戦連勝。視野を広めた。
当時ゴルフ設計で内陸コースにリンクスの特徴を表現しようとしたハリー・コルトと出会い、彼の右腕となる。30代半ばまで海外の仕事を担当。
その間、来日。わずか2ヶ月の滞在で、川奈ホテル・富士コース、廣野GCを設計し日本のゴルフ設計に貢献した。
ちなみに、アリソンバンカーとは深いバンカーという言う意味ではなく、かやぶき屋根にインスピレーションを受けて造形されたもので、バンカーに芝のマウンドが垂れ下がるように顎が造形されたものを呼びます。
彼の師匠ハリー・コルトも同大学ゴルフ部OBで全英アマ予選出場の腕前で、ショートホールのミケランジェロと呼ばれた天才。あるがままの自然を生かしながら、流麗にして過酷な線が次々と描かれる戦略的なコースを誕生させています。
■井上誠一
1908年~1981年。東京都出身のゴルフ場設計家。来日したチャールズ・H・アリソンに接したことで設計家の道に入る。日本を代表する名設計家。大洗ゴルフ倶楽部、龍ヶ崎カントリー倶楽部など数多くの名コースを造る。
その土地の自然を生かした美しく、そしてあらゆるプレーヤーが楽しめる戦略性の高さを持ったコースを作り出す名匠。
名設計は、コースの地形を綿密に観察して、自然を生かしながら、プレーヤー語りかけるように旋律を描きます。設計家は当然のことながら、ゴルフを良く知っていることが伺えます。やはり、プレーヤーの心情を熟知していたと言えるでしょう。
次に、コース設計に必要なハザードのポイントを確認していきましょう。
■理想的な2打目の地点・IP
理想的な2打目の地点を称してIP(Inter Cross Section Point)と言います。この言葉は測量用語で2直線の交点と言う意味です。
フェアウェイのセンターとティーグランドを一定の距離250ヤードで結んだ架空の点です。しかし、IPは高低差も風向きも考慮せず距離だけで決まり、フェアウェイセンターに置かれるので設計者から見た理想なプレーラインではありません。
■設計の基本理念は公正の理念
マッチプレーの伝統を持たない日本では、基準打数が相手ですからスコアの良いことがベストとされました。それゆえ、不特定多数の参加者で技術の優劣を正当に評価しなければならないゴルフ発祥の地・英国に比べて、コース設計は優しく、ハンディキャップも甘くなりがちです。
■ハザードの可視性
当該ホールのどこからでも、すべてのハザードの位置が確認できることがもっとも公平なコースだと言えます。しかし、原始的なリンクスコースの場合はハザードが見えることが稀であり、英国ではこれを肯定しています。一方アメリカのコース設計では、土地も広く、造作もしやすく、視野的に見えることが公平であり、プレーヤーの挑戦を掻き立てるように可視的にデザインされています。
■ハザードの種類
懲罰型のハザード。全てのプレーヤーにとって公平な配置であること。基本的に、FWの横に置かれたハザードは方向性のミスを罰するトラップです。プレーラインを横切るハザードは距離のミスやトップボールからターゲットを守る役目があります。しかし、ショットの数だけミスもあり、すべてを公平にしようとすると、窮屈になります。
最盛期の懲罰コースは300以上のバンカーに囲まれてまいたようです。現在日本の平均が100個前後ですので、プレーは大変だったと言えます。
■知略型ハザード
懲罰型の難点は、公正を望むとハザードの数が増えることです。これでは、楽しいプレーができなくなります。
H・S・コルトやA・マッケンジー・C・H・アリソンは最少のハザードでより多くのプレーヤーに影響を与えることを考えました。つまり、ベストルートにハザードを配置したのです。多くのプレーヤーのプレーラインの近くに配置されるので、ハザードのすぐ近くがベストルートと言えます。
■英雄型ハザード
知的ハザードのレイアウトでは、ハザード近くに球を運べるプレーヤーが有利になります。たとえば右ドックにコーナーにあるバンカーや池です。ところが、そのハザードを一気に飛び越えることができると恩恵が期待できます。
英雄型の原型も古いリンクスにあるとされており、デスモンド・ミュアヘッド氏曰く、ノース・ベリックの15番、通称レダンが特徴を表しているようです。このホールは現在では長いパー3ですが、昔は短いパー4の英雄型と言えます。
■レダン
レダン(redan)、またはレダンホール(a redan hole)と呼ばれる、ホールのレイアウトがあります。パー3で、グリーンの横幅が奥行より長く、グリーンがティグラウンドに対して斜めにレイアウトされているホールが、レダンです。
スコットランドにあるノースベリック・ゴルフリンクスの15番、パー3がこのレイアウトの原型。このホールについている名称が「レダン」です。
厳密にはグリーンの左サイドのほうが、右サイドよりも遠くなるようにレイアウトされていて、グリーンの中間部分と手前がバンカーなどでガードされているのが特徴。グリーンは奥から手前、プラス右から左(左奥が遠い場合)に傾斜しています。
マスターズトーナメントが開かれる、米・ジョージア州のオーガスタナショナルGC後半の難ホール、12番パー3が、恐らく最も有名なレダンの例のひとつでしょう。このレイアウトは、ピンがどの位置にあっても前後の幅が狭く、なおかつ手前がハザードによってガードされているため、常に正確な距離感を要求される優れたレイアウト。それゆえ、これまで全世界で最もコピーされてきたホール形状といわれています。
コースの地形や風、水脈を熟知して、プレーヤーの心情を知り、戦略的で誰もが楽しめるコースで、しかも18ホールを通じて旋律があるコースを設計家は目指します。ベストルートを防ぐために設けられたハザードは、時に最高の道案内となります。一流の設計家は人工物であるコースを自然と上手に調和させながら、しかも飽きさせないようにハザードを配置します。
設計家の目的を読み取り、挑戦と謙虚さを持って臨むプレースタイルを目指せたら、必ず良いゲームができるのではないでしょうか?
どんなに素晴らしいショットを放っても、設計家の意図から離れたらスコアには結びつかない。逆に、スイングの状態が良くなくても、ベストルートが見えるプレーを心掛けると、結果は良いと言えます。
”コースと対話しながら無理せず、精神的なプレッシャーを過度に受けずにプレーする”を心がけて見ましょう。ここに、今回の上達の秘訣があると思われます。